ソフトバンクと野村證券
今日の日経新聞の記事で、ソフトバンクのビジョン・ファンド2号が個人マネーを呼び込むため、野村證券と協議を行っているのではないか、という趣旨の記事がありました。私がファンドを運営していた時は、原則法人のみで個人からの出資は受け入れていませんでした。なぜなら、法人は永久に存続すると考えられているからです。ファンド出資者の個人が何らかの原因で亡くなってしまった場合、相続等が発生し、ファンド持分(ファンドの出資者)は誰に帰属するのか、が不明確になる恐れがあり、ファンド運営上リスクがあるからです。
記事が正しければ、今回野村証券側は遺言も絡めたビジネスにするのではないかと思います。そうなると、ビジョン・ファンドに出資する個人というのは所謂『富裕層』。ソフトバンクにはSBI証券という関係が深い証券会社があり、SBI証券の口座数は大和証券を抜き、現在業界トップの野村證券を追い越そうかという勢いです(足元ではすでに追い越しているかもしれません)。なぜソフトバンクはSBI証券と組まず、野村證券と組むことにしたのか、新聞記事を読んだときふと疑問に思いました。しかし『富裕層』というキーワードに辿り着き、納得しました。
ビジョン・ファンド1号の2019年3月末のパフォーマンスは29%と新聞記事にあります。1年間で29%も増加する金融商品は現在の日本には他になく、今後も同じくらいのパフォーマンスが期待できるのであれば、みなビジョン・ファンドへの出資をしたいと思うでしょう。しかし『富裕層』をターゲットにしている可能性が高いと思われるので、結局お金持ちしかお金持ちにしかなれない、という事に尽きてしまうのかな、と思われます。
これにはもう一つ気を付けなければならないことがあります。通常ファンドへの出資は企業(金融機関も含め)が検討します。が、今回個人から集めるという事になったという事は、企業からお金が集まらなかった、つまり期待するリターンに見合ったリスクではない金融商品であった、という事です。そのリスクの高い金融商品が個人に販売される可能性があります。購入するしないは個人の自由なので何も言いませんが、こういう背景があることを確り把握しておいた方が良いでしょう。