6億3,400万円!

今日で9月が終わりですね。早いなぁ…。最近アドバイス先から『資金調達決まりました!』という報告が多く、ふと気になりみんなでどれくらい調達したのか計算してみました。

調達時の成功報酬をいただいていないので、今までカウントした事がなかったです。なので覚えている限りですが、ざっと足し合わせて9ヶ月くらいで6億3,400万円。そのほぼ全てが初めての調達。現在調達中のアドバイス先もあるので、もう少し増えそうです。

弊社からは何か特殊なアドバイスをしたわけではなく、基本通りの資料作りを指導し、アドバイス先にはただ淡々とやるべきことをやってもらいました。もちろん資料内で論理矛盾があるところを指摘したり、意味が解らないところ、もっと強調した方が印象が良くなりそうなところを指摘/修正はしました。

エンジェルから出資を受ける場合は違いますが、そこそこのVCや事業会社から出資を受け入れる時は、自社の強みを明確にする事、それを事業計画に落とす事、プレゼン資料を簡潔にわかりやすく作る事などなど、基本的なことをしっかりやれば調達できます。お困りであれば一回相談いただければと思います。

そういえばアドバイス先の本店所在地を調べてみたら、全て東京以外の会社でした…東京に支店/支社がある会社はありますが。コロナ禍が地方ベンチャーの資金調達を容易にしているのかもしれません。インターネットを介した面談が自由にできるようになったことが、その理由なのかなと思います。結論付けるのは早いと思いますが…。

つらいぜ、ベンチャー投資(株主編)

引き続き、株主編です。

◇株主編
 ベンチャーキャピタル(VC)は出資をし、会社の株主になります。定款で取締役会を設けている会社(取締役会設置会社)の場合、会社法上、株式会社の中で最も強い権利を有するのは株主です。取締役を選ぶ権利も株主にあります。ちなみに、株主に選ばれた取締役の中から代表者(社長)を選ぶのは、原則取締役会の権利になります。では、株主が複数いる場合、どのように株主としての意思決定をするのか、それは株主同士で構成される株主総会での多数決が基本です。なので、株主の顔ぶれ及び各株主が有している株式の議決権比率がとても重要になります。そして、株主同士の意見が割れる場合、とても要注意であると筆者は思っています。

①VC比率が高い
 未上場会社の場合は特に、株主の意見が経営に直に伝わるケースが多く、VC比率が高い会社はVCの意見が経営に反映されやすいです。なのでVC間で意見が割れた場合、その影響が経営を直撃します。
 筆者が引継ぎで担当した会社は、とある上場企業の社内ベンチャーを切り出した会社で、切り出したタイミングでVC4社が普通株式で計数億円投資しました。なので経営陣の保有株式比率は40%弱、それに対してVCのシェアは60%を超えていました。社内ベンチャーで数年実績があったので、会社設立時から売上は順調に伸びていき、業界でも上位4位に入る勢いでした。取締役会にはVCの担当者もオブザーバーで入り、業界1位の会社をマークし、経営指標を細かく比較し、「次月はどんな手を打つか」という前向きで活発な議論が毎月なされていました。
 ところがある時、会社のシステムに小さなトラブルが生じました。その修正のためVCの1社がシステム会社を紹介したのですが、社長はそこと違うシステム会社と契約しました。しかし社長が契約したシステム会社ではその小さなトラブルを修正できず、その結果システムが2ヶ月近く止まってしまい、その期間の売上が「ゼロ」になってしまいました。また、そのトラブルの修正を担当していた従業員が疲弊しどんどん会社を辞めていき、最後はCTOも疲弊して辞めてしまいました。このトラブルを発端として、VC4社が2対2で喧嘩を始めました。VCが紹介したシステム会社と契約せず自分で見つけてきたシステム会社と契約してトラブルを長引かせた社長に対して激怒しているVC2社と、社内ベンチャーを立ち上げここまで会社を引っ張ってきたのは社長なのだから、株主として社長と協力し、早く事業を軌道に乗せることに協力すべきだと主張するVC2社。しかもVCシェアはぴったり同じ比率でした。今まで協力的だったVC達でしたが、取締役会で社長の細かいミスを突くVC2社、それをフォローするVC2社に分かれてしまいました。結局その溝は埋まらないまま数ヶ月が過ぎ、社長は円形脱毛症になり筆者に助けを求めてきました。やはりこれではいけないと思い、社長よりの立場をとっていた筆者が呼びかけ、VC4社で集まって今後を協議することになりました。社長と対立しているVC2社のこの時点の意向はすでに投資を継続することは全く考えておらず、備忘価格でも良いからすぐに株式を売却したいというものでした。しかも社内調整済みです。会議でそのような話を聞いてしまうと、社長よりの立場をとっている筆者側のVC2社は、投資を継続したいものの、計30%近いシェアを占めるVC2社が株式を安価に売却するとなるとさすがに投資継続は難しいかな、とならざるを得ませんでした。結局VC4社が社内調整を行い、最も社長の信頼を得ていた筆者が、VC4社が株式を売却する旨を社長に伝えることになりました。社長の株式シェアが高ければもう少し違う結果になったかもしれません。

②リードVCのファンド満期
 ベンチャーキャピタルはファンドという資金運用基金を作り、そこで様々な会社(時には個人)から期間限定でお金を預かり、それをベンチャー企業へ投資し、ベンチャー企業が成長した後その投資を回収し、資金提供者へ返済するというビジネスモデルです。約束した期限が来たら、資金提供者へ必ず資金を返さなければなりません。なので、ベンチャー企業へ投資した資金も必ずいつかは引き上げられます。
 これも筆者が引き継いだ会社になります。その会社は順調に売上を伸ばしていましたが、投資後3年を経過したあたりから売上が伸び悩み始めました。その理由はいくつかあるのですが、ここでは割愛します。そのベンチャー企業には複数のVCが投資をしており、10%程度出資しているVCがリードになっていました。VC業界でいうリードとは、当該ベンチャー企業に出資しているVCを代表して会社側と様々な交渉をするVCの事で、一般には出資金額が最も大きく、かつ、出資比率もVCの中では最も高い、という特徴があります。リードVCは会社側との資本政策の交渉や、増資タイミングの決定、そしてEXITタイミングの決定をしたりします。もちろん他のVCはこの決定に従う必要はありませんが、株式会社は資本多数決の原理で動いているのでシェアの大きいリードVCの判断はかなり大きいです。ある時リードVCが他のVCに招集をかけました。なんだろうな、と思って会議に参加すると、リードVCから、「ファンド満期も近いので、株式を売却します」とのことでした。話を聞くと、ファンド満期に関しては数年前から意識していて、少し前までは良い条件(株価)で株式を売却できそうだったとのことです。ただ直近の業績は伸び悩んでおり、その改善も現在見えにくい状況との判断でした。なので「備忘価額に近い値段であれば引受けても良いという先があり、弊社(リードVC)はそこに株式を売却しますが、みなさんどうしますか?買い手側としてはある程度シェアが欲しいとのことだったので、ご希望があればご紹介します」とのことでした。集まったVCは皆びっくりです。ここで初めてリードVCのファンド満期が他のVCよりも先に来るという事がわかりました。当然他のVCからは、ファンド満期の延長(通常出資者の了承を得られれば1年~2年は延長可能)ができないか、株価をもっと交渉することはできないのか等々いろんな意見が出ました。しかしリードVCとしては、ファンドの延長は考えていない、時間をかけて株価を上げていくよりいくらでも良いから早期に株式を売却したい、とのことでした。リードVCが抜けると他のVC合計のシェアはとても低くなってしまい、その程度の低いシェアでは将来株式を売却するタイミングが見込めなさそうでした。みな自社に持ち帰り対応を協議しましたが、結局リードVCと同じく、安価に株式を売却することとなりました。ベンチャー投資でフォロワー(リード以外)となる場合、必ずリードVCのファンド満期について意識しておかなければならない、と実感した案件でした。

③M&A前提の投資
 ベンチャー投資でも経営陣の了承を事前に得て、IPOではなくM&AでのEXITになることもあります。その場合、VCの出資比率が高くてもEXIT株価にあまり影響はありません。株式市場での需給バランスを気にしなくても良いからです。ただし、M&Aというのは買い手候補者のデューディリジェンスに時間がかかるケースが多く、かつ、上場会社が買い手の場合インサイダー情報になる可能性もあり、リードVCのみが交渉するケースが多いです。このようなケースでフォロワーとして投資している場合、リードVCの担当者と仲良くしておくこと、及び、株主間契約(ないしは投資契約)を事前に確認しておくことが重要です。
 VCのシェアが70%超、フォロワーで投資、EXITはM&Aという案件を引き継いだのですが、前任者がリードVCの担当者とあまり仲が良くなく、月一回の取締役会で顔を合わせるだけでした。担当者同士雑談をすることもなく、会議が終わると、また来月よろしくお願いします、お疲れ様でした、という状況でした。なので筆者は引き継いだ後、投資先に挨拶をしに行くと同時に、リードVCの担当者の元も訪問しました。そして月一回の取締役会の場以外にもリードVCの担当者との接触回数を増やし様々な情報を共有、仲良くなることを心がけていました。そのようにしている中、リードVCの担当者から連絡があり、実はM&Aで交渉している先が複数社あり、最も有望な買い手候補は上場会社で、インサイダー情報になる可能性が高い、交渉している株価はだいたいこれくらい、との情報が得られました。話をもう少し聞くと、既にデューディリジェンスは終わっていて、株価の交渉になっており、ほぼほぼ合意していて、買い手候補側で最終の社内決済を行っている、とのことです。しかも、リードVCの保有株式だけの譲渡でも構わないし、他のVCも希望があれば株式を購入可能、という事でした。そこまで話が進んでいるとは全く思っていなかったので、かなりびっくりしました。実はベンチャー企業とリードVCそして他のVCとで株主間契約を締結しており、その中で共同売却権も定められていました。そこで定められていたことは簡単にいうと、リードVCが株式を売却する際は他のVCに伝え、他のVCも希望があれば一緒に売却できる、でも、最初に伝達されてから30日以内に返答がないとその権利を失うというものでした。実はこの30日というのは大きい組織のVCにとってはとてもハードルが高い内容です。今は変わったかもしれませんが、当時大きい組織のVCが投資先株式を売却するには、株式を売却することに関する投資委員会(ないしは稟議)を行わなければなりませんでした。その資料には、投資の経緯から始まり、当初の事業計画と実績の差異分析、当初想定したEXITと現在想定されるEXITの違い、今回のEXITがファンド満期内で最も良いEXIT(高く株式を売却できる)である、という記載が必要です。この資料を作るのにかなり時間を要します。しかも投資委員会開催予定日の1週間前には付議書を提出するとともに、投資委員会メンバーに事前の根回し(説明)も行っておかなければなりません。そういうことを考えると、資料作成は実質10日程度しかなく、その期間で資料を完成させなければリードVCと共同で株式を売れなくなってしまう、とうことになります。なので担当者によっては夜中まで資料作成する、土日も出社する(もちろんあとで代休は取りますが)という事になります。筆者の場合、リードVCからの正式な連絡の前に情報が仕入れられたので、資料作成、事前の社内根回し等は余裕をもってでき、無事リードVCと一緒に株式を売却出来ました。M&AでのEXIT前提のベンチャー投資でフォロワーで入るときには、リードVCの担当者と頻繁に情報交換をしておいた方が良い、かつ、事前に株主間契約等でEXITに関してどのような内容になっているか把握しておいた方が良いと実感した案件でした。

つらいぜ、ベンチャー投資(経営幹部編)

今回は経営幹部編です。

◇経営幹部編
 最初は社長一人で事業を行うケースが多いです。しかし、ベンチャーキャピタルからある程度の金額を調達する段階ではチームが存在し、従業員も数名いることが多いです。その為、社内にCFOやCOO、執行役員、部長と言ったような経営幹部がいます。このような経営幹部が会社を辞めるというような場合は要注意、と筆者は思ってます。

①営業を担当する経営幹部の辞任
 会社の売上に責任をもつ営業担当の経営幹部。取引先に対しても「会社の顔」として大きな影響力を持つだけではなく、社内の売上を管理し、予算遂行の責任を取る立場でもあります。そのような営業担当の経営幹部が会社を辞めるということは会社にも大きな影響を与えます。
 筆者が担当していた投資先の営業担当の取締役は、元大手企業の営業部長を経験した方でした。その経歴は素晴らしく、この人がいれば売上も大きく伸びるかも、と思わせるような人物でした。飲みに行けばとても親身になって色々話を聞いてもらい、キャピタリストとして駆け出しのころの筆者はその人をお兄さんのように慕っていました。しかし数ヶ月経っても中々売上が伸びていきません。焦る営業担当の取締役は自分のネットワークを駆使して、日本全国を飛び回り、会社の製品を売り込むと同時に、製品の使い方のセミナーを開催したりして、土日もほぼ休みなく働いていました。筆者は株主としてその働きぶりを見ており、努力はいずれ結果に表れるだろう、と思っていました。ところがその営業担当取締役が急に辞任する、という事になりました。実の両親が高齢で介護が必要、との理由でしたが、結果が出ない責任をとったんだな、と思いました。この時点では仕方がない、と思いましたが、もう少し必死に止めていればよかった、と後になって後悔することになりました…。その会社が営業をかけていた先は全てその取締役の顔でつながっていたので、当該取締役がいなくなると急に話が進まなくなり、月次で管理している案件リストから取引先がどんどん外れていきました。社内的にも営業のリーダーがいなくなったことで残されたメンバーはどのように動いていいのかわからず、どんどん皆が疲弊し辞めていきました。結果この会社は社長と従業員1名の会社規模になってしまい、投資した株式も価値が上がらず譲渡が困難になってしまいました。営業担当の経営幹部が会社を辞めるという事は、社外的にも社内的にも大きな影響を及ぼすんだな、と実感した投資先でした。

②CFOの突然の辞任_1
 CFO(最高財務責任者)はCEO(最高経営責任者)と共に会社を大きくする責任のある経営幹部です。CEOは会社全体の事に責任を持ちますが、どちらかというと経営成績、つまり売上に責任を持つ一方、CFOは社内の管理業務全般について、特に資金調達や資金繰り、予算と実績の管理などに責任を持ちます。CEOとCFO、この両者が車の両輪のような関係にあり、会社が前に進んでいきます。その為、CFOが突然辞任するという事は会社にとってとても大きな影響を与えます。
 筆者が引継ぎで担当することとなった投資先の事です。その時点で既に本格的な上場準備に入っており、売上も好調、利益も充分という感じでした。その為、しばらく月一回のモニタリングを続けており、会社側と良好な関係を築いていきました。しばらくすると証券会社の審査が入り、いよいよ上場へ、という中、急にCFOが辞任するという事になり、衝撃が走りました。慌てて会社に行き、面談予定は入れてなかったのですがCFOに出てきてもらい、なぜ辞めるのかを聞き出しました。中々辞任に関しての本音を話してくれませんでしたが、漸く聞き出せた内容は、最近売上が下がってきており、予実がぶれてしまい、証券会社からこのままでは上場は難しいと言われている事、CEOが資金繰りについて全く理解しておらず、勝手に多額の設備投資を決め発注してしまっている事(これはガバナンスの問題です)、その影響もあり数ヶ月で資金ショートしてしまう可能性が高いこと、このような事をCEOに進言しても聞いてもらえずパワハラのような仕打ちを受けている事、でした。外から見ているとキラキラしていて上場へ向けてまっすぐに進んでいる会社との理解でしたので、非常にびっくりしました。結局CFOは筆者との面談後すぐに辞任してしまいました。CFOがいなくなった会社は片方のタイヤがなくなった車のようです。大きな音をたてて止まることになった上、車体にも大きな損傷が出ることになりました。その後この会社はどうなったかというと、上場できなかったのはもちろんの事、多額の設備投資をそのまま実行してしまい、資金繰りに窮しました。CEOはお金のことを全くわかっていなかったので、金融機関やVCとの交渉など、資金を工面する動きができませんでした。そのような窮状を見ていたとある金融機関(らしき会社)がこの会社にお金を貸すことになりましたが、それが反社会的勢力…社長が気付いて筆者のところに相談しに来たのですが、こちらも既にどうすることもできず。しかも反社会的勢力に関与されてしまった会社の株式を他に譲渡することもできず、投資は塩漬けに。株式は社長にしか売れない状況となったのですが、その社長もどこかに消えてしまい、携帯を鳴らしても出ないという状況になりました。会社自体は勝手に引っ越しして社名を変えていました。誰が経営しているのかも分からない状況です。CFOが突然辞任するという事はベンチャー投資にとってとても大きな影響があるので、特に注意した方が良いと思います。

③ CFOの突然の辞任_2
 CFOが辞任するというのは、実は結構あります。決められていたタイミングなら良いのですが、そうでない場合は特に注意が必要です。またCEOは会社の実情を良く見せようとするので、CFOと普段から確りコミュニケーションをとり、会社の実情を把握する必要があります。
 投資先のCFOが就任後1年も経たずに辞任したケースがありました。このCFOもなかなか本当のことを話してはくれませんでしたが、漸く聞き出せたところ、CEOが会社粉飾を強制したことが原因でした。しかも昔からよくある手法で。コンサルティングとかシステム納品とか形のないもので売上を上げている会社は、粉飾しやすいという特徴があります。1社だけでは無理ですが、決算月が異なる会社が何社か共謀することによって架空の売上を計上することが可能になります。ただこれはババ抜きと一緒で、その規模がだんだん大きくなってきて何周かした後には、動かすお金が不足し、必ず破たんするという結末になります。その時ジョーカーを持っていた会社が負けるということになります。CFOはCEOにその取引をやめるよう伝えたのだがやめなかった、結果CEOとの信頼関係が破たんし、そのような状況の中CFOを続けるわけにはいかない、という事でした。至極真っ当だと思います。そのほか、経費に関しても私的流用が見受けられ、それを指摘すると喧嘩になるという事でした。個人的にはCFOの気持ちはすごくわかりますが、投資家としてはそういうガバナンス意識の高い人材が社外流出するのはとてもマイナスで、非常にもったいないな、と思ったので慰留しました。しかし、CFOの決意は変わらず。この投資先については即座にEXITするという方針になりました。たまたま投資金額以上の金額で株式を引受けても良いという会社が現れたため損はしなかったのですが、CFOの辞任をきっかけに会社の実情が把握でき、大事に至らなかったケースといえます。

つらいぜ、ベンチャー投資(社長の行動編)

 筆者がベンチャーキャピタリストとして担当した投資先数をよく聞かれるのですが、正直、数えられないレベルです。年に2回の人事異動があり異動するキャピタリストから投資先を引き継いだり、課長に昇進しチームメンバーの投資先も管理するようになったり。40社目くらいまでは覚えているのですが、関与した投資先のトータル数についてはわからないです。多分三桁ちょっとだと思いますが、自信がありません…。

 今回は筆者が経験したベンチャー投資における失敗の兆候について、いくつかご紹介したいと思います。こういうことが起こると危ないよ、という事例です。予算に対して実績が追いついていない状況がしばらく続いているとか、資金繰り表と手元資金が合っていないとか、そういうわかりやすいものは外しました。また、企業が特定されないよう、実際起こった事とは少し変えています。先ずは、社長の行動編です。

◇社長の行動編
 投資をした後のモニタリングは、基本的に社長へのヒアリングになります。個別で聞くこともありますし、取締役会等の会議に出席し質問することもあります。なので社長との関係や社長の変化について敏感になっておく必要があります。その中で下記のような事が起こったら要注意と筆者は個人的に思っています。

①社長の身につけているものが急に高級品になる
 ベンチャー企業の社長は意外と質素な方が多いです。と言いますか、興味のあることがファッションや高級品よりビジネス、という方が正確でしょうか。そのような社長が多い中、高級品を身につけているのを見つけてしまうと、キャピタリストとしてはやはり気になってしまうものです。
 赤字が続いている投資先を引き継いだのですが、2、3回目の面談の時、社長の腕時計が急に数百万円するものに変わりました。怪しいな、と思って調べると業績は良くないのに社長は高給。もっと調べてみると、取引先との接待で使う店は女性が接待してくれるお店で、社長はそれ『ら』の店の常連でした。しかもそういうお店が1軒だけでなく、複数。帰りにはお店が車を出して家まで送ってくれるというくらいの常連でした。このような接待が売上に貢献すれば良いのですが、そのようなことはあまり考えている感じもせず。結局この会社の投資を引き上げることになったのですが、当然投資金額全額を回収できませんでした…。

②社長の目に力がなくなる
 毎月のように社長と面談しているとわかります。目に力がなくなってきたときは大概違う事に興味が移ってしまった時です。筆者にもそのようなケースがありました。
 この投資先も引継ぎだったのですが、何ヶ月か社長と面談をしていくうち、段々社長の目に力がなくなっていきました。目が死んできた、という感じでしょうか。そんなことを思っていた時、「二人で話をしたい」と急に社長から連絡がありました。なんだろう、辞めたいのかな、なんて思っていたら面談時に、「実は、今度の選挙に立候補します」とのこと。契約上VCの了承がないと社長は辞任できないことになっていたので、リードである筆者のところに相談(報告?)しにきたそうです。あ~目に力がなくなってきたのはこのことがあったからなんだなぁ、と思いました。立候補することは個人の自由なので止められません。一方でファンドを運営している以上、投資先のバリュー(価値)が下がることを止めなければなりません。その後は社長と色々話し合い、COOをCEOに、選挙に立候補しても暫く会社の事業には関与する、契約で決められている内容については次期CEO(現COO)が重畳的に引き継ぐ、という条件付きで了承することにしました。結局この会社もCEOが代わったことで方向性が変わり、ファンド満期内にIPOすることはできませんでした。

③社長との面談日程が取れない
 何回連絡しても面談日程が決まらない、代表電話に電話をかけて社長に取り次いでもらおうとしても、いつも会議中。代わりにCFOと話をするも、社長の日程は取れない…等々様々な理由で社長と面談できない状況が続くことがあります。この時は要注意です。大概会社の状況が良くなく、投資家と話をしたくない、という思いが背景にあります。社長はこういうとき投資家側から文句を言われると思っているからです。本当は逆なのですが。会社の状況が良くないときにこそ積極的に投資家に相談し、改善策を見つけていく、そのようなことをすべきだと思います。
 これは筆者のチームメンバーが担当していた投資先の話です。なかなか社長との面談アポイントが取れなかったのに、急に日程が決まり、面談することになりました。筆者は残念ながら他の予定が入っており、筆者の上席者にお願いしそのチームメンバーと行ってもらう事にしました。面談内容を後で聞いたのですが、社長との面談のはずが、なぜか専務取締役という名刺を持った人物との面談になったそうです。しかも取締役なのに株主総会で承認した記憶も履歴もないという…。面談は終始専務取締役の威圧的は雰囲気に押され、またこちらも面食らったこともあり、何も聞けず話せず終わったとのことでした。すぐにその人物が何者なのかという調査をしましたが、ヒットしません。多分名刺の名前も偽名だったんだと思います。危うい雰囲気を感じEXITを模索していた中、会社側から株式を購入したいと申し出ている会社(A社)がある、との連絡があり、社内で吟味をした結果、その会社にとても低い株価で売却することになりました。その会社に投資をしていた他の投資家にも聞きましたが、みな同じような経緯で株式をA社に売却していました。結局投資先はA社の子会社となり、その後A社に現預金を全て持っていかれ、清算してしまいました。投資先にとっても投資家にとっても後味の悪い結果となりました。あの専務取締役はこのスキームの当事者だったのだろうなぁ、なんで社長はこのようなスキームを了承したのかなぁ、等々いまだわからないことだらけです。無理してでも何としてでも、定期的に社長と面談することは必要だな、と思ったケースでした。

銀証分離の緩和

金融庁の金融審議会「市場制度ワーキング・グループ」において、「銀証ファイアーウォール規制の見直し(案)」が示されました。今までは同一のグループであっても、銀行と証券会社との間で顧客情報を共有することは禁止されており、顧客の了承があった場合にのみ、情報を共有してよいというものでした。それが、顧客の同意なく顧客情報を同一グループの銀行と証券会社とで共有してよいという事になるそうです(※顧客側から情報共有を止めて欲しいという要求がある場合はダメです)。

そもそもの話ですが、現在の日本では銀行業と証券業が分離されています。なぜなら、銀行の優越的地位の濫用を防止するためであり、米国のグラス・スティーガル法を参考に当時の証券取引法で規制されました。しかしこのグラス・スティーガル法は1930年代に制定された法律であり、現在米国ではこの法律が緩和されている状況です。

そして日本でもようやく銀証分離が緩和される方向となり、同一グループの銀行と証券とで顧客情報の共有は原則OKとなるようです。

現在の金融商品ですが以前と比べかなり複雑化しており、銀行の金融商品と証券会社の金融商品との差も縮まっている状況です。個人が余剰資金を運用しようとした場合、以前は定期預金がメインだったと思いますが、この低金利時代、他の運用方法も検討すると思います。企業の株式や社債での運用だったり、投資信託であったり、株式投資型クラウドファンディングだったりファンドラップだったり…以前と比べ物にならないほど運用方法が分散されており、個人が取りうるリスクに応じた運用方法が選択できるようになっております。他方、この金融商品は銀行だけしか扱えない、こちらは証券会社しか扱えない、というものも存在します。その為、銀行と証券との間で情報共有がなされない場合、適切な金融商品の情報が個人に伝わらないという状況が考えられます。もったいないですよね。なのでそのようなミスマッチを少なくする、という点において、今回金融庁から示された「 銀証ファイアーウォール規制の見直し(案) 」は素晴らしいと思います。ただ、銀行の優越的地位の濫用をどのようにチェックし防止していくか、という事も強化する必要があると思いますが。

A SPAC – on – SPAC

BloombergがSPACとSPACのM&Aディールに関して記事にしていました。表題は『SPAC専門家も「見たことない」取引、ソフトバンクG出資会社が目指す』というものですが、英語の原文(抜粋)では、ソフトバンクGが記事に出てくることは全くなく…(笑)Roivantという創薬ベンチャーにソフトバンクGが出資をしているという関係だけという…。私もソフトバンクGが関係しているのか?と思って記事に飛びついてしまいました。

さて、 Bloombergの記事を簡単に説明します。

既に上場しているMontesというSPACに対し、Roviantという創薬ベンチャーが買収提案をした、要は、「MontesさんRoviantを買いませんか?」と言う提案をしたというのが主な内容です。このような話は多々あるので特に問題視する必要はないのですが、興味深いのはその後に起こることです。

RoviantはMontesに対し、約73億ドルでの買収を提案していますが、さらに、2年以内に、既に上場SPACに買収されているImmunovantという会社を買収するという提案もついていました。しかも Immunovantは2019年にRoviantが上場SPACに約4億ドルでSpin Offした会社である上、現在の株価に対し70%のプレミアムをつける、というものです。ちなみにプレミアム額は約11億ドルになります。

このプレミアムの根拠についてですが、まだ開示はなされていないけどImmunovantには自己免疫疾患の研究に優位性があることを根拠にしています。が、この研究のヒトに対する治験は副作用が懸念されるため、既に中止されています。そのため、70%のプレミアムと言うのは正しいのかどうか、という事がわからない状況です。もしかしたらImmunovantは他にも強みがあるかもしれませんし。ただ、このような動きを嫌がったMontesの株主が既に株式を売却しているという事実もあるようです。

個人的には、ベンチャー企業がSPACを買収することを約束し、その価値込みでSPACへ買収提案すると言うのは特に問題ないのではないかと思います。ただその価額の根拠を明確に示さないと問題になると思います。

記事でわかることはここまでですが、今後取材が進むにつれ、もう少し背景が見えてくるのかもしれません。

パネイル民事再生法の適用を申請

ユニコーン期待銘柄と知られているパネイルが、2021年5月18日、東京地裁へ民事再生法の適用を申請し、同日保全・監督命令を受けました。パネイルは電力小売り関連のベンチャー企業で、2021年1月13日にfor startups社が発表した「国内スタートアップ想定時価総額ランキング最新版(2021年1月)」では、時価総額767億円で9位にランキングされていました。時価総額だけを見ると、順風満帆にみえますが、実はそうではなかったという事です。

パネイルの資金繰りは2018年頃から非常にひっ迫していました。大手独立系のVCがリードでしたが、手を変え品を変え様々な方式でパネイルの資金調達に奔走していたのを覚えています。当時は私もベンチャーキャピタリストでしたので、「え?こんな方法で資金調達するの?」と驚いた記憶があります。今回の報道では東京電力やパネイルのCTOが悪者のように書かれていますが、それはただのきっかけでしかなく、そもそも資本政策の失敗が招いた結果なのではないか、と思っています。

マザーズに上場している企業は約350社ですが、そのうち時価総額が1,000億円を超えている企業は何社あるかご存知でしょうか?凡そ15社~20社です。その企業のPERは100を超えている企業、500を超えている企業もありますし、決算が赤字予想なのでPERが「ー」という企業もあります。通常PERは20程度と言われていますので、時価総額が1,000億円を超えている企業は、株式市場からは将来をかなり期待されている、と言うことができます。

他方、VC等がベンチャー企業に投資をする際に想定するEXITにおいて用いるPERはどれくらいかご存知でしょうか?投資予定のベンチャー企業が上場したら、という想定をし、類似会社のPERの平均を用いますが、20から良くても40程度です。このPERだと上場時のバリュエーションが1,000億円を超える、と言い切るのは中々難しく、投資リターンが見込めず、結果、投資を見送るという判断になります。ましてや、現在のバリュエーションが1,000億円を超えている企業であれば、上場時のバリュエーションは当然1,000億円を超えると予想できないと投資はできません。つまり、時価総額が高くなればなるほど、資金調達は非常に困難になります。

利益が出ており、かつ、業績が右肩上がりで良くなってきているベンチャー企業は時価総額が高くても資金調達は容易だと考えられますが、そのようなベンチャー企業はあえて資金調達をする必要もないのではないかと思います。つまり、「業績があまりよくないベンチャー企業が」「多額の資金調達をしたいと考えている」が、「既存株主のシェアを守る」ために「時価総額を高く」して調達する、というケースが多いのではないか、と感じています。ここにリードVCの指図もあると、もう手が付けられません…パネイルがこの最たる例なのかと思います。思い切って株価を下げていれば資金調達ができたかもしれませんし、無理して東京電力と提携する必要もなかったのではないかと思います。

ベンチャー企業の経営者が、自社の時価総額を高くしたいという思いは良くわかりますし、当然だと思います。ただその為には、自社の業績向上が伴わないと、最悪の結果になってしまいます。リードVCもダウンサイドリスクやダイリューションリスクも確り受け入れ、適切なバリュエーションで資金調達をするよう指導するというのが必要なのではないか、と考えられますし、経営者もファイナンスを確り勉強し、リードVCと交渉していく、という事が必要ではないか、と考えています。

SPACを使ったグラブの上場について

東南アジアの配車サービス大手グラブ・ホールディングス(以下、「グラブ」)がSPAC(特別買収目的会社、Special Purpose Acquisition Company)を使って上場することになりました。正確に言えば上場しているSPACに買収される形で、グラブの株主は株式市場で保有株式を売却できるようになります。

このSPAC、日本ではあまり知られていません。SPC(Special Purpose Company)というとピンとくる方もいらっしゃると思いますが、そこに「Acquisition(買収)」が入ったと思えば理解も早いと思います。

詳細は割愛しますが、要は企業買収を目的としたSPCを先に株式市場に上場させ、2年以内に未上場企業を買収するというものです。未上場会社としては既に上場している企業(SPAC)に買収されるので、通常のIPOよりも短い時間で自社株式を公開できるというメリットがあります。

日本でも似たような手法があり、いわゆる「裏口上場」と呼ばれていました。時価総額の低い上場企業の株式を買い占め、その上場企業と利益の出ている未上場企業を合併させるというものです。今はTOBの規制や、このような場合の審査基準(合併等による実質的存続性喪失に係る上場廃止基準)も明確化され、このようなことがしにくくなっています。

今後日本でもSPACの上場が認められるのか、注視していく必要があるのではないかと思います。因みに2021年4月9日の朝日新聞の記事によると、東京証券取引所の山道社長は朝日新聞社等のインタビューに対し、「SPACの上場について真剣に検討するべきだと思っている」と回答したそうです。

当社アドバイス先の資金調達について(約2.5億円)

当社(代表社員:小井口尚希)の資金調達アドバイス先である、インクルTechで社会課題を解決する株式会社Lean on Me(リーンオンミー)が 、総額約2.5億円の資金調達を実施いたしました。以下は一部抜粋となります。詳細はリンクをご覧ください。

インクルTech(インクルテック)を提供する株式会社Lean on Me(リーンオンミー、本社:大阪府高槻市、代表取締役:志村駿介)は、障がい者支援のためのeラーニング「Special Learning(スペシャルラーニング)」のサービス強化を目的に、サムライインキュベートが運営する「Samurai Incubate Fund 6号投資事業有限責任組合」など6者を引受先とする第三者割当増資及び金融機関からの融資を合わせて、総額2億5,400万円の資金調達を実行いたしました。

緑の桜

当社から歩いて5分くらいのところに、播磨坂という桜並木があります。その桜の木の中で1本だけ、緑の桜が咲く木があります。

もう少しで散ってしまうので、気になる方はお早めに。

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