日本のベンチャー投資ファンドのパフォーマンスについて
少し前のニュースになりますが、日本ベンチャーキャピタル協会(JVCA)が国内VCのファンドパフォーマンスを算定しております。
https://jvca.jp/news/17726.html
国内のVCファンド数が597ある中、76のファンド数での算定となっておりますが、ファンド総額は国内VCファンド全体が2.5兆円なのに対し、1.1兆円(カバー率43%)となっております。
ベンチャー投資ファンドは7年から10年程度存続するケースが多く、2010年設立のファンドからの統計だけでは正確なパフォーマンス計算ができているとは言いにくい状況なのですが、日本ではこのような統計がなかったので、とても参考になると思います。
興味深いのは2012年設立のファンドパフォーマンスが非常に良いこと。ネットIRRで31.1%となっております。その次が、2011年設立のもので同じくネットIRRが20.1%。このころ何があったかというと、東北地方を襲った東日本大震災。この震災後ベンチャー投資が冷え込み、StartupsがVCからの資金調達に非常に苦労した時期です。そう、コロナ禍の現在と非常のよく似た状況です。私もその時はVCでキャピタリストをやっていましたので、状況はよくわかります。当時、Startupsへの投資を(非公式に)クローズするファンドがとても多くありました。しかし、設立間もないファンドはStartupsへの投資意欲が旺盛(投資をしないとファンド出資者からプレッシャーがかけられる)でした。一方、資金調達をしたいStartupsは自らの時価総額を引き下げてでも調達をしておりました。結果、VCファンド側は将来有望なStartupsへ低い時価総額で投資ができました。また出資を受けたStartupsはその資金を基に、資金が不足がちな他のStartupsを横目に事業を拡大していきました。
現在と状況が非常によく似ていると思います。資金調達をしたいStartupsはベンチャーキャピタルが2011年や2012年に積極的な投資をしていたかどうかを調査してから打診してみた方がいいのかもしれません。打診されたベンチャーキャピタル側は内々に新規投資を停止しているとしてもそのことはStartups側には伝えず、形式上のデューデリジェンスを行います。そしてデューデリジェンスにわざと時間をかけることで経済環境が良くなってくるのを待つ形状があります。Startupsとしてはそんな無駄な時間は過ごせないですよね。なので、現在資金調達を検討しているStartupsは、打診候補先のベンチャーキャピタルが2011年や2012年に積極的な投資をしていたかどうか、事前に調べた方がいいと思います。