上場のメリット

本日の日経新聞に、『企業、長期資金確保急ぐ』という記事がありました。償還まで10年以上の年限の社債発行が相次ぎ、22年ぶりの高水準になったということです。未上場企業が社債を発行するには大抵の場合私募債となり、金融機関が引き受けることが多いです。一方上場企業の場合、上場市場で社債を発行でき、その引受先は金融機関や事業会社の他、最終的に個人が保有することもできます。そこで、上場のメリットについて少し見ていきたいと思います。

Startups(ベンチャー企業)は株式上場を目指しますが、その主な理由が時価総額上昇による有利な資金調達及び優秀な人材の確保、というケースが多いです。実は上場するとこれ以外にもメリットがあります。上場すると、企業が調達する資金が多様化できます。つまり記事にもあるような社債発行が用意となること、また金融機関からの借入金利が低下すること、です。上場するという事はそれなりに利益を獲得し、企業として継続していける(継続企業)と推定され、倒産リスクが低減していると考えられます。その為、金融機関の金利も低下するという構図になります。余談ですが、上場企業の従業員は住宅ローンを借りる際、かなり金利が安くなります。それはその従業員が路頭に迷うことが少ないと考えられ、金融機関としては回収リスクが低まり、低利で住宅ローンを貸し出せるようになるわけです。これも上場企業の従業員に対する福利厚生の一環ではないかと思います。

さて話を戻します。みなさんは調達した資金についてどれだけリターンを返さなければならないのか、意識していますか?言い換えれば、資金の出し手の要求利回りがどれくらいか意識していますか?金融機関からの借入の場合、現在だと2%~3%/年、社債の場合1%/年前後、そして株式の場合20%/年以上、という感じです。株式で調達するのが最もコストがかかります。Startups(ベンチャー企業)の場合、金融機関からの借入や社債発行がしにくいので、株式で調達するしかなくなり、結果もの凄く高い成長を求められることになるのです。

私は(12年もベンチャーキャピタリストをしていたにもかかわらず)上場することが全てだとは思いませんが、多様な資金調達が可能になり、かつ従業員の住宅ローンの金利も低くできる、という事は上場の大きなメリットだと思います。上場を考える際には株式のことだけではなく、借入や社債についても検討し、メリット/デメリットを考慮の上、判断していただければと思います。