スタートアップ・エコシステム拠点都市の選定
2020年7月14日、内閣府はスタートアップ・エコシステム拠点都市を選定しました。
https://www8.cao.go.jp/cstp/stmain/20200714.html
グローバル拠点都市として、『スタートアップ・エコシステム 東京コンソーシアム(東京、横浜、川崎、つくば、和光)』、『Central Japan Startup Ecosystem Consortium(名古屋・浜松)』、『大阪・京都・ひょうご神戸コンソーシアム』、『福岡スタートアップ・コンソーシアム』を選定。推進拠点都市として、『札幌・北海道スタートアップ・エコシステム推進協議会』、『仙台スタートアップ・エコシステム推進協議会』、『広島地域イノベーション戦略推進会議』、『北九州市SDGsスタートアップエコシステムコンソーシアム』が選ばれました。
このプロジェクトは、日本の強みである優れた人材、研究開発力、企業活動、資金等を活かした世界に伍する日本型のスタートアップ・エコシステムの拠点の形成と発展を目指したものであり、一定の集積、潜在力を有する都市で、地方自治体、大学、民間組織等がスタートアップ・エコシステムの形成に取り組む拠点が選定されております。選定された拠点に関しては政府、民間サポーターによる支援が実施されます。
ここで内閣府の日本再興戦略(その後未来投資戦略、現在は成長戦略)の中でベンチャー企業(スタートアップス)向けにどのようなことが行われてきたのか、見ていきたいと思います。
日本再興戦略は2013年から始まっており、当初の施策は民間投資・産業新陳代謝の促進を促すため、大企業によるベンチャーファンドへの投資等を促すような税制の創設、及び技術を有した大学がベンチャーファンドの創設ができるようその準備を促すものでした(翌2014年に大学が運営に関与するベンチャーキャピタルファンドが設立されました)。要は、ベンチャー企業へ資金が渡りやすいような施策のみでした。その後、2014年には大企業とベンチャー企業の連携、政府系資金の供給が強化されました。つまり、オープンイノベーションの強化と、2009年に設立された株式会社産業革新機構(現在は、株式会社産業革新投資機構と株式会社INCJにわかれています)の投資能力の強化です。
そして2015年には『ベンチャーチャレンジ2020』という目標が掲げられ、2020年のベンチャーエコシステムの絵姿が発表されました。それは、海外(当時は主にシリコンバレー)との連携を強化、及び大学が生み出す技術や人材の成長育成を重視した支援を行っていく、というものでした。このころ、政府関係機関コンソーシアム及びアドバイザリーボード設置、未来投資会議の創設、『始動Next Innovator』の立上げが行われています。そして2016年は人材に注目し、イノベーションの創出・チャレンジ精神にあふれる人材を創出することを目標としました。また、引き続き海外との連携強化も謳われています。少し興味深い点としては、雇用環境を整備し、多様な働き手の参画を促す、と記載された点です。『イノベーション、ベンチャー創出力の強化 、経済成長を切り拓く人材の育成・確保、成長制約打破のため』とされていました。
そして翌2017年、日本再興戦略は未来投資戦略と名称を変更しました。引き続きイノベーション・ベンチャーを生み出す好循環システムを創造することを目標としました。ベンチャーキャピタルからベンチャー企業への投資額の目標係数(対名目GDP比)も設定されました。また、官民ラウンドテーブルも開催され、民間の意見を官僚に直接伝えることができる機会も設けられました。
このように、2013年からベンチャー企業へ大企業の資金や政府系の資金が流入しやすい環境整備、大企業とベンチャー企業の連携、日本の大学技術・人材の強化育成、海外との連携強化、が行われてきました。そして今回スタートアップ・エコシステム拠点都市が選定され、各拠点にて大学との連携・海外との連携に関し、政府が後押しをするという構図になっています。選定された拠点が多くの成功事例を輩出し、今回選定されなかったその他の拠点も同じような流れになってくれることを望んでいます。一方で、選定されなかったその他の拠点にも有望なベンチャー企業が存在することを私は知っておりますので、そのようなエリアも頑張ってほしいと思います。