VC・CVCからの投資額見通し
2020年4月にデロイトトーマツベンチャーサポートが調査した結果が、日経新聞に掲載されています。調査対象者数は不明なので、一般論として述べていいのかわからないですが、おおよその傾向はつかめるのではないかと思います。
コーポレートVC(CVC)と一般的なVCが、コロナ禍前の2019年と比較し今後投資額を増やすかどうか、というデータになります。CVCは90%が投資を減少させる(10%は2019年以上に投資額を増やす)と回答したのに対し、VCは75%しか投資を減少させる(25%が2019年以上に投資額を増やす)と回答した会社がなっかたようです。このスタンスの違いは、ファンド出資者の違いになると考えられます。
CVCは事業会社が自ら資金を拠出し、自ら運営しています。その為投資先の選定に関して多くの場合、事業会社とシナジーのあるベンチャー企業が選ばれることが多いです。コロナ禍においては事業会社が属する業界の今後の見通しが投資判断に大きく影響してきます。現在(2020年7月)のような状況の中、経済の先行きが明るい、と判断する事業会社はとても少ないのではないでしょうか。それがCVCのうち90%が投資を減少させると回答した大きな要因だと思われます。
他方VCは、ファンドに出資する権利を金融商品として売り出しています。買い手はCVCと同じく事業会社であったり、金融機関等なのですが、買い手としては『純投資』、つまり投資した金額がさらに増えて返ってくる投資としてその金融商品を購入しています。そのような出資者がいるVCファンドではこのコロナ禍は東日本大震災以来のチャンスになります。2019年まではベンチャー企業の時価総額が高止まりしていました。これは資金の出し手が多く、ベンチャー企業としては高い時価総額でも資金調達ができたという事になります。しかし状況が一変しました。資金の出し手が減り、ベンチャー企業側も時価総額を低くしないと資金調達ができない、という状況になりました。ここにVCのチャンスが到来しています。将来有望なベンチャー企業に低い時価総額で出資ができ、かつ将来大きなリターンをファンド出資者へ提供することができるというチャンスです。その為2019年以上に投資額を増やすVCがCVCよりも多くなっているという結果になっているものと思われます。
ベンチャー企業(Startups)側としては資金調達に時間をかけたくないのであればCVCよりVCに声掛けをするのが良いのではないかと思います。ただし、時価総額は希望の額より大きく下げられると思いますが。他方、余裕のあるベンチャー企業は今無理して資金調達をする必要がないのではないか、とも思います。それぞれ置かれた環境が異なるので一概には判断できませんが、資金の出し手の思惑を知ったうえで、資金調達活動をしていってもらえればと思います。